2008年1月8日火曜日

繁栄の陰で貧富の差が拡大するロシア

「繁栄の陰で貧富の差が拡大するロシア」(2007/10/10)

(日経)ロシアの印象と言えば、「寒い」、「怖い」、「よく分からない」国だというのが、定評であった。しかし、最近若い日本人と話すと、「ロシアは物価が高い」という、今までに聴いたことのない新しいイメージをよく耳にする。この感覚はまったく正しいものである。2000年以降はオイル・マネーで潤った大金持ちが登場、国民の所得も上昇して空前の消費ブームも起きている。ロシアは今、過熱気味の景気のなかで繁栄しているように見える。

栄える都会の苦しむ人々
 私はこの頃、モスクワに仕事で行ったときでも時間を見つけては、昔住んでいた近所の人や友達とできるだけ連絡をとって近況を尋ねることにしている。故郷との繋がりが絶えないようにという私なりの努力である。今回も、高校で一番仲がよかった同級生と会い、昔話に花を咲かせた。楽しく話していたが、75歳になった彼女のお母さんに話が及んだとき、友達の声が少し曇った。「元気だけど、ずっと働いているよ。毎朝6時に起きて、混んだ電車で通勤して、病院で事務をやっている。」
自宅で栽培した野菜を売り、生活費を捻出する高齢者もいる
 「いまだに?どうして?年金があるでしょう?」と、私は驚いて、疑問を連発した。
 「年金は月2,500ルーブル(約12,000円)しかないの。しかもその内2,000ルーブル(約9,400円)が公共料金で持っていかれるよ。生活ができないの」と、どこかこの好景気にそぐわない落ち込んだ声で返事がきた。高級外車でモスクワの道路が渋滞しているこの時代に、一方で、高齢になっても働かざるをえない人は数知れないのである。
 高齢者や、公立病院や学校で働く公務員などの低所得者にとって負担になるのは公共料金だけでなく、食料品も日常品も、東京から来た私でさえも驚くほど高値である。
貧富の格差は拡大傾向にある

 ロシアのオンライン政治経済ニュースサイトのロスビジネス・コンサルティングによれば、モスクワ政府の経済政策と市の発展委員会は、モスクワ市における平均賃金(月間)は、2010年までに40%上昇し、37,489ルーブル(約176,000円)になるとの予測を発表した。今のモスクワの平均賃金(月間)は約20,000ルーブル(約94,000円)である。一方で、1人が1カ月生活するのに必要な最低限の金額は現在6,000ルーブル(約28,000円)弱で、2010年までには7,600(約36,000円)ルーブルまで上昇する、という。まだ2桁を切ったばかりの高インフレ率は生活水準を向上させる大きな障害である一方、より不透明にすることを改めて確認させる数字である。

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