2008年1月26日土曜日

水俣病溝口訴訟判決 原告請求を全面退け 熊本地裁

水俣病溝口訴訟判決 原告請求を全面退け 熊本地裁

 (朝日)水俣病の認定申請から21年後に棄却した熊本県の処分は違法として、同県水俣市の故溝口チエさんの次男、秋生さん(76)が、知事を相手に棄却処分取り消しと認定義務づけを求めた訴訟の判決が25日、熊本地裁であった。亀川清長裁判長は「処分の遅れにはやむを得ない事情があり、違法とは言えない。水俣病という証拠がない」として、原告側の請求を全面的に退けた。

 行政の認定基準より幅広い救済を命じた04年の関西訴訟最高裁判決後、水俣病をめぐる初の司法判断。「最高裁判決は損害賠償の基準」として、行政が認定基準を見直さず、行政と司法の「二重基準」で混乱が続く中、認定問題に踏み込む判断が示されるかが注目されていた。

 チエさんは1899年、水俣市生まれ。有機水銀に汚染された魚介類を食べ、1974年に認定申請したが、認定審査に必要な公的検診を終えぬまま、77年に死亡した。県は94年になって病院調査を始めたが、廃棄されていたなどで診断書を入手できず、95年に申請を棄却した。

 原告側は「(チエさんの)資料収集を放置し、申請から処分まで21年かかったのは不作為の違法だ」と主張。一方、県は「当時、認定申請者が急増して検診医が不足した。約5千人の未処分者がおり、生存者を優先した」と反論していた。

 水俣病の認定をめぐっては、77年に国が示した「判断条件」が、複数の症状の組み合わせを必要とし、多くの申請者が棄却された。

 原告側は「申請時の(主治医の)診断書から、四肢末端優位の感覚障害がある」とし、「最高裁判決の基準に照らせば、水俣病と認められる」などと主張した。

 県側は診断書の信用性を争い、「水俣病の症候はなかった」と反論していた。

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