2008年1月15日火曜日

法廷プレゼン能力、米国弁護士らが実技指導

法廷でのプレゼン能力磨け 米国の弁護士らが実技指導

 (朝日)法律の素人中心の裁判員にどう訴えるかが重要になる裁判員制度。導入される09年春が近づき、裁判官も検察官も弁護士も、話し方や説明能力を磨く訓練を始めた。どんなに大切なことも、小難しい法律用語の棒読みでは裁判員の心に届かない。外国から専門家を呼んで合宿したり、模擬裁判で映画キャラクターを引き合いにしてみたり。「わかりやすい裁判」への試行錯誤は続く。

裁判員制度導入に向け、米国人講師から弁護技術の手ほどきを受ける日本の弁護士たち=12日、東京都新宿区で
 「動かないで左右均衡に立って、両手は胸の下で合わせる!」「血が出るほど手を握りしめないで」「これは『会話』なんですから、メモを読まずに証人の目を見て」

 12日、東京都新宿区の早稲田大キャンパス。日弁連主催の「法廷弁護指導者養成プログラム」は、2泊3日の缶詰め合宿の初日を迎えた。米国人のマイケル・ケリー弁護士が身ぶり手ぶりを交えて「ダメだし」を繰り返した。

 プロの裁判官を相手にする現行とは違い、裁判員にどう訴えるか。国内では法廷弁護技術の教え方が確立されていないため、陪審員制度の歴史が長い米国の全米公判弁護協会から弁護士や裁判官ら4人を招き、全国から弁護士が参加した。

 受講生たちを戸惑わせたのが「~をしましたか」「~を見ましたか」という質問への「禁止令」だった。「こういう質問からはイエスかノーしか引き出せない。その代わり『説明してみてください』『教えてください』を使ってください」とケリー弁護士。肯定・否定で事実関係を詰めるやり方に慣れている参加者のなかには、立ち往生する人もいた。

 金沢市の松山悦子さんは弁護士7年目。「用意したメモを読んではいけないと言われて焦った。今までのやり方ではダメだと痛感した」

 裁判員にどう訴えるか。全国で取り組みが続けられている。
 熊本地裁では去年11月、模擬裁判が開かれた。恋人を包丁で刺し殺した女が殺人罪に問われたという設定だ。
 「包丁で2回刺したのだから、明確な殺意に基づいた犯行だ」と検察官は訴えた。すると、弁護士は女の自己防衛としてこう反論した。「1回刺されたのに、男は女のほうへ向かっていった。『ターミネーター』みたいなやつ、誰だって怖いでしょ」。弁護士は被害者を映画キャラクターに例えて女を擁護。裁判長も終了後、「許容範囲です」と太鼓判を押した。

 岐阜地裁は昨年6月、岐阜放送のアナウンサーを講師に招いて「人をひきつける話し方」を研修した。裁判官ら約50人が参加。まずは腹式呼吸による発声法。おなかに手をあてて正しい口の形で50音を発音し、早口言葉を繰り返す。「アナウンサーの話し方はテンポよく聞きやすかった。ぼそぼそ早口はだめですね」と男性職員(26)。

 宮崎地裁の「話し方研修」でもNHKアナウンサーが「原稿を理解しないまま、ただ読んでいては、相手には伝わらない」と訴えた。

 鹿児島地検では、05年9月から一部の公判でパソコンのプレゼンテーションソフトを使っている。検事は「視覚的に訴えやすくなり、要点もおさえやすくなる」と、手応えを感じている。対する鹿児島県弁護士会の上野英城会長は「ベテラン弁護士になると、ソフトを使いこなせる人は少ない。検察より出遅れている感は否めない」と危機感を持つ

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