2008年2月1日金曜日

教諭殺害「時効」、民事は認めず賠償命令

教諭殺害「時効」、民事は認めず 高裁、男に賠償命令

 (朝日)東京都足立区で78年、小学校教諭だった石川千佳子さん(当時29)が殺害され、26年後に遺体が見つかった事件で、殺害を認めて自首した男(71)に遺族が損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審判決が31日、東京高裁であった。青柳馨裁判長は請求権が20年で消えるとする「除斥期間」を超えていても、このケースでは遺族が賠償を請求できると判断。330万円の慰謝料分だけを認めた一審・東京地裁判決を変更し、殺害行為に対する損害などとして約4200万円に増額する判決を言い渡した。

 除斥期間を適用せずに損害賠償の請求権を認めた事例は、集団予防接種によるB型肝炎ウイルスの感染で国の責任を認めた06年6月の最高裁判決などがあるが、遺族側代理人の弁護士によると、時効となった刑事事件をめぐって請求権を認めたのは初めてとみられる。長期間、未解決だった事件について犯罪被害者の権利を重視した判断として、今後の同様のケースに影響しそうだ。

 判決によると、男は石川さんを殺害した後、遺体を自宅に隠した。遺族は04年8月に男が自首するまで、殺害されていたことを知らなかった。

 判決はこうした経緯を踏まえ、石川さんの請求権を相続した遺族が権利を行使できないのに、男が20年で賠償義務を免れることは「著しく正義・公平の理念に反する」と判断。「特段の理由があり、民法上の規定にかかわらず、遺族が相続した千佳子さんの請求権は消滅したとはいえない」と結論づけた。一審判決は除斥期間を定めた民法の条文について「法律関係を確定させるため、画一的に定めたものだ」と述べ、請求権が消滅したと判断していた。

 遺族側が、男を警備員として採用した使用者責任があるとして足立区を訴えた訴訟では、昨年12月に区が和解金2500万円を支払うことで和解が成立している。

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